戻れごま

 

外耳炎 耳垢栓塞 急性中耳炎 慢性穿孔性中耳炎 滲出性中耳炎 耳管狭窄 真珠腫性中耳炎 老人性難聴 

突発性難聴 耳硬化症 メニエール病 良性発作性頭位めまい症

 
外耳炎
耳かきなどで外耳に傷ができ、細菌感染を受けてひどく痛む

 耳の違和感、かゆみで始まり、強く痛むようになります。耳の穴の前側を押すと痛みが増すことで中耳炎と区別がつきます。部分的に発赤や腫脹がみられることがあり、ひどくなって外耳道がふさがってしまうと、難聴が起こります。

 治療には抗生物質などの軟こうの塗布や、必要に応じて切開も行われます。また、抗生物質や鎮痛剤の内服が行われたりします。原因は、耳かきやマッチ棒などでつけた傷口に最近が感染するためです。耳をつついてしまった時は、予防のため、綿棒にオキシフルなどの弱い消毒液を塗っておきます。

 
耳垢栓塞
耳垢が詰まって耳をふさいでしまう。素人療法はせず医師のもとへ

 耳垢がたくさん詰まって外耳道をふさいでしまうことがあります。詰まった耳垢が小さい内は特別な症状はありませんが、水が入って膨張すると耳が詰まったような感じがして耳鳴り、難聴、ときには痛みを起こします。どちらかといえば柔らかい耳垢に多くみられます。

 自宅で取ることは難しいので、耳鼻科で処置してもらいます。耳かきやピンセットでとれないモノは吸引したり、グリセリンや耳垢水で柔らかくしてから取り出します。

 定期的に耳垢を取ることが予防となります。

急性中耳炎
高熱とともに耳が激しく痛み、耳だれとなって次第に軽快する

 細菌が鼻咽腔から耳管を通じて中耳腔に入り込んで炎症を起こす病気です。耳管が太くて短い幼児によくみられます。

 軽い場合には風邪症状と一緒に耳がふさがった感じや耳鳴り、難聴、軽い耳の痛みがあります。鼓膜は少し赤くなる程度です。

 しかし、症状が強くなると38〜39度の高熱とともに脈打つような激しい痛みが起こり、鼓膜は真っ赤に充血して腫れ上がります。やがて、鼓膜が破れて膿が出て、いわゆる耳だれという状態になり同時に痛みや熱が引いてゆきますが放置せず、必ず耳鼻科を受診しましょう。

 また、急性中耳炎をくり返して慢性に移行したり、中耳炎がひどくなって炎症が乳様突起にまで及ぶと腫は耳も後ろのほうまで広がり、痛みや熱などの全身症状がさらにひどくなります(乳様突起炎)。

 さらに症状が頭蓋内へ及ぶと脳膜炎を併発して大変危険です。しかし、最近では乳様突起炎や脳膜炎を起こす程の重傷例はめったにありません。

 

抗生物質や消炎酵素剤、切開排膿により2週間程で治る

 鼓膜の色や腫れを検査することで診断がつきます。

治療には抗生物質や消炎酵素剤などの投与が行われ、中耳腔に膿がたまっている場合には、鼓膜を切開して排膿します。切った鼓膜は膿が出てしまえば自然にふさがるので心配はいりません。

 後に難聴を残さないように耳管通気(鼻から耳管の入り口にカテーテルを入れ、空気を送る)をする事もあります。多くは2週間程で治っていきます。それまでは安静にし鼻を強くかまないようにして、入浴は控えます。原因は鼻風邪などで細菌が耳と鼻を繋ぐ耳管を通って中耳に炎症を起こすためで、原因菌は連鎖球菌やぶどう球菌、インフルエンザ菌などです。

まれに外耳道から菌が入ったり外傷から起こることもあります。1度起こすと繰り返しやすいので早期に耳鼻科を受信して完全に治療することが大切です。

慢性穿孔性中耳炎
痛みは無いが鼓膜にあいた孔から耳だれが出て難聴となる。

 急性中耳炎を繰り返す内に慢性化するもので、小児期から持ち越した大人に多い病気です。

 主な症状は耳だれと難聴で、風邪をひいたりして急性に症状が悪くならない限り痛みはありません。耳だれは粘膿性で血液が混ざることもあります。続けて出ていたり、かさぶたをつくる程度のこともあります。鼓膜を診察するとほぼ中央に孔があいており、難聴の程度は孔の大きさに比例します。痛みがないために放置されがちですが徹底的な治療が必要です。

 治療としては抗生物質の点耳や服用、副腎皮質ホルモン剤が使われ、耳管通気が行われます。しかし慢性化したものは手術しない限り、完全治癒は望めません。

滲出性中耳炎
耳管狭窄から中耳に組織液がたまる。穿刺や切開で排液する

 耳管狭窄が続いて組織液が中耳腔に出てたまってくる病気で中耳カタルともいわれます。

 主な症状は耳の閉塞感や耳鳴り、難聴で自分の声が頭に響きますが痛みはありません。鼓膜を見ると奥の方へ落ち込み中にたまっている液が透けて見えるので診断がつきます。鼓膜に注射針を刺して液を吸いとったり切開して取り出したりします。さらに耳管通気をすると、10日ほどで治ります。

耳管狭窄
滲出性中耳炎になり難聴を起こす。アデノイドを取り通気をする

 耳管は中耳と鼻咽腔をつなぐトンネルです。ふだんは閉じていますが、ツバや食事を飲み込む時に開いて空気を通して中耳の気圧を外気と同じにして鼓膜が振動しやすいように調節しています。この機能が損なわれて耳管が閉じたままになると中耳内に空気が入らなくなり、酸素は吸収されて陰圧となり鼓膜が内側へ落ち込み、振動が悪くなり中耳粘膜から滲出液が出て(滲出性中耳炎)、放置すると鼓膜が内壁に癒着してしまいます。

 耳がふさがった感じがして重く、自分の声が頭に異常に響き、音が聞こえにくくなります。軽い場合には電車がトンネルに入ったときのような症状です。鼻風邪をひいたときに鼻咽腔の病変が耳管に及ぶために起こります。

幼児に多く、特にアデノイドのある子どもに起きやすいものです。耳管通気と同時に原因となった風邪などの治療を受けます。アデノイドがある場合には切除します。

真珠腫性中耳炎
悪臭のある耳だれが特徴。放置すると命に関わる恐ろしい病気

 慢性中耳炎の一種です。名前はきれいで痛みもありませんが、気づかぬうちに重篤な合併症を起こす悪性の病気です。鼓膜の辺縁に穿孔があり耳だれには悪臭があります。真珠腫とは鼓膜の孔から中耳に皮膚が入り込んではびこり上皮の角化剥脱物がたまり、腫瘍のようになったものです。これが次第に大きくなると周囲の組織を破壊して、顔面神経麻痺やめまい、さらには頭蓋内にまで達し、脳膜炎などの合併症を引き起こし、生命の危機さえ招きます。

 手術による治療が必要で鼓室形成術により聴力も回復し、予後は良好です。

老人性難聴
50歳前後から起こる。回復の困難な難聴は補聴器をつけるとよい

 生理的な老化現象の一つで耳の聞こえが悪くなる状態です。個人差が大きく、一般には50歳前後からあらわれ、高い音から聞こえにくくなります。

 難聴には感音性難聴と伝音性難聴の二つがありますが、中耳の病気やアデノイド、耳管狭窄などによるものは伝音性難聴で病気を治せば難聴もよくなります。しかし老人性難聴は感音性難聴で元には戻りません。補聴器をつけることになりますがその際は自分にあったものを医師に処方してもらいます。

突発性難聴
突然、片方の耳の聞こえが悪くなるが早期治療で治る

 今までなんでも無かった人がある日、突然、耳の聞こえが悪くなるものです。難聴は片耳だけに起こることが多く、耳鳴りやめまいを伴うこともあります。しかし、繰り返すことがない点がメニエール病と違います。

突発性難聴も感音性難聴のひとつですが早期に治療を受ければ回復するので、できるだけ早く治療を受けることが大切です。高単位の各種ビタミン剤や副腎皮質ホルモン剤、血流をよくする薬などが投与されます。原因ははっきりしていませんがウィルス感染や内耳の血流不全などが関係しているようです。

耳硬化症
両耳の聞こえが悪くなる病気。日本ではあまり起こらない

 両方の耳がだんだん聞こえなくなってくる病気で女性に多く、思春期に発病します。欧米では比較的多いものですが、日本ではまれです。

放置すると全く聞こえなくなることもありますが早期に手術を受ければ聴力を回復させることができます。耳小骨の中のあぶみ骨の周囲の変化が原因といわれます。

メニエール病
グルグル回る回転性のめまい発作。ストレスや過労が誘因となる

 発作的にめまいを繰り返す病気で30〜50歳代に多く起こります。耳鳴りや難聴を伴うことが多く、めまいは周囲がグルグル回るようで目を閉じると自分自信が宙に浮いて回転するような感じがします。めまいが強いと立ち上がったり歩いたりすることができず、冷や汗、吐き気を伴い、嘔吐することもしばしばあります。普通、発作は2〜3時間でおさまりますが、時には2〜3日続くことがあります。

 めまい発作が起こったら、暗くした部屋に静かに寝かせ安静にします。しばらくして治まって来たらできるだけ早く専門医に診てもらいます。難聴、耳鳴りは発作が治まると元にもどりますが、難聴が残るようになります。

 治療には心身の安静が第一で、その上で鎮静剤、ビタミン剤、鎮吐剤などが投与されます。

 原因は内耳の迷路にリンパ液が異常に溜まるためだと考えられていますが、なぜリンパ液が溜まるのかについては、まだ分かっていません。精神的ストレスや過労が発作の誘因になりやすいといわれています。

良性発作性頭位めまい症
寝返りなどでめまいを起こすが短時間で治る。耳石器の変性が原因

 寝返りをうったり、靴ひもを結ぼうとしたときなど頭位や体位を変換した時にめまいを起こす病気です。難聴や耳鳴りは無く、短時間で治ることが殆どです。

 頭位眼振検査や頭位変換眼振検査を行うと診断がつきます。鎮静剤や結構改良剤、ビタミン剤を服用することで軽快していきます。

 原因は耳石器の病変によるものと考えらていますがストマイなどの薬物中毒、頭部打撲の既往歴が背景にあることがすくなくありません。

 

主婦と生活社:うちのお医者さん1987刊より